竹中平蔵総務大臣が「通信と放送のあり方に関する懇談会」を設け、メディア融合への機運が盛り上がっていることを受けて、著作権やコンテンツ産業育成、さらに新しいメディア像などの議論が盛り上がった。
1月下旬、政府の知的財産戦略本部が、ネットでのコンテンツ配信を促進するため、放送局なみに著作権許諾を簡素化する方針を打ち出した。
中野潔氏(大阪市立大学)【010】は「著作権者と著作隣接権者の差を、仮にとっぱらってしまい、有体物の複製によらないで、著作物を公衆に伝達する業の者については、無許諾の複製を許す(ただし、創作的行為により当該著作物の成立に貢献する者に費用は払う)…だと、どんな問題が起きるのだろう…」などと疑問を呈した。
山田肇氏(東洋大学)【022】は、「放送事業が、有線放送や委託放送事業を含めて、著作権について強制実施の特権を享受できるのはなぜか。それは放送には公共性という側面があって、社会に寄与しているからだ。その公共性を担保しているのが、番組編集準則(公序良俗に配慮して放送するという規制)。電気通信役務利用事業者も番組編集準則を守ると宣言すれば、著作権について強制実施の特権を享受できる。そこには免許制は不要」と簡素化に賛成した。
制作側の立場から、中井秀範氏(キャスティ)【016】は事後承諾の形に賛成しながらも「ブロードバンドコンテンツを振興させるために、放送番組をもっと流通させればよいという考え方も、いかにも策のない短絡的な考え方だ。政府は、デジタルCS、デジタルBSに続いて、BBの世界でも地上波キー局支配を続けようと考えているのか? 本気でコンテンツ産業サイドからの発想ができる人を知財なんとかに入れて欲しい」と述べた。
さらに中井秀範氏【031】は、「メジャーな会社でも、金にならないから予算を減らす、予算を減らすからクオリティが下がる、面白くないから客が来ず金にならないという負のスパイラルに落ち込んでいる」として、「私は、大きなビジネスをしている、金銭的に余裕があるものこそ、ネットコンテンツの充実のために頑張るべきだと思う」とネットコンテンツへの投資を呼びかけた。
宿南達志郎氏(慶應義塾大学)【075】は、難視聴解消問題で、「ADSL経由でIP再送信しようとしたら、実験は良いが、本放送は駄目だというのが、ローカル局+キー局の答えだ。放送法で規定されている努力義務を放棄しているのに、他社が再送信をしたいと申し出ると嫌だと拒否している。 免許地域の全ての世帯に番組を配信する努力義務を果たすことが大前提で、民放の全番組が見られない地域には別の手段(IPまたは衛星)で配信する努力を妨げない、ということも次の目標ではないか」と述べた。
村上豊氏(みずほ証券)【084】はNHK民営化問題で、「民放がネット配信をすると即、明日から減収と捉えるのも短絡的な見方。広告の売り方を変えれば将来的に増収に持っていけるかもしれない。NHKも民放と協調あるい競争しながら収益源を多様化することも可能かと思う」と述べた。
宿南氏【085】は「民放が新しいことをやらないのは、今のぬるま湯的ビジネスモデルで十分利益が出るからだ。地方局という流通事業者を生かさず殺さずという状態を維持し、新規参入を妨げる仕組みを維持したいからだ。要するに業界のリストラが必要で、NHKも民放(特に地方局)のスリム化や流通手段のコストダウンをすべきだと思う。そのために、衛星やIPマルチキャストをうまく使って欲しい」と述べた。
村上豊氏【087】【094】は「NHKと民放の世界に冠たる二元体制が続いてしまったため、ハリウッドがそれなりの対抗勢力となっている米国と違い、日本の映画会社やプロダクションは疲弊し切ってしまった。(今回の改革が進めば)放送業界のみならずプロダクション業界、映画業界など周辺業界まで飛び火するような気がする」「融合問題は、ある面、生活者側の技術環境の変化に合わせて、停滞した既往のメディア・コンテンツ事業をビジネスとして再生させてゆくかという意味を持っているのではないか」とまとめた。
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